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2025年05月21日

離婚調停に提出すべき証拠-70 婚姻費用分担請求における権利濫用ないし信義則違反の抗弁

離婚調停等で提出すべき証拠について解説いたします。

 

今回は、離婚調停に付随して、離婚成立までの間の別居中の生活費である婚姻費用の請求がなされている場合で、

婚姻費用の権利者側あるいは義務者側に不貞行為等の有責性が認められる場合について考えます。

 

婚姻費用は、夫婦の収入、子の数、年齢により、算定表を用いて、おおよその月額が決まることは

ご存知の方も多いかと思われます。

 

もっとも、上記は原則論であり、別居に至った原因が専ら、あるいは主として一方にある場合には、

①このような原因を作った側が、別居中の生活費を請求することは、権利濫用ないし信義則に違反し、

許されない(但し、権利者が別居後も子を養育している場合は、子の生活費、すなわち養育費相当額を請求する事は

許される(子に原因がある訳ではないため。))、と考えられております。

 

また、②別居後も、婚姻費用の権利者が居住する自宅のローンを、婚姻費用の義務者が支払っている場合に、

婚姻費用の権利者の収入に対応した、統計上の標準的な住居費を、本来の婚姻費用の基本月額から差し引いて取り決めることが

多いですが(なお、この場合でも、差し引く額は、統計上の住居費が限度であり、これを超えるローン額の支払がなされていたとしても、

その額を差し引く事はできません。不動産の名義人が自分の財産に対する支払をしているに過ぎない、という側面があるためです。逆に、

夫婦共有名義であり、夫婦でペアローンや連帯債務で借り入れ、婚姻費用の義務者が月々のローン全額を支払っている事案では、権利者側が負担すべき

金額分を差し引く事も考えられます。)、この場合でも、別居に至る原因が専らあるいは主として婚姻費用の義務者側にある場合は、

統計上の住居費相当額を差し引いて婚姻費用の月額を定めるよう求める事は、権利濫用ないし信義則に反し許されないと考える事が多いです。

 

このように、婚姻費用を定めるに際しては、権利者側、義務者側どちらの場合でも、別居に至る有責性が存在する場合に、

結論が変わり得ます。

 

なお、上記の通り、「別居に至る原因」とありますので、不貞行為、暴力がこれに当たる事は明らかですが、不貞行為、暴力に限られる訳ではありません。

近時の裁判例では、誹謗中傷の執拗な繰返し(婚姻費用の権利者に対してなされたものだけでなく、権利者の親族等になされたものも含みます。)が

婚姻関係破綻の主たる原因と認定し、これを理由に、婚姻費用分担請求が権利の濫用に当たる旨、判示された事案が存在します(東京高裁令和6年11月19日決定)。

 

そこで、不貞行為であれば、興信所の報告書、他方配偶者と交際相手間のメール、LINE等、暴力であれば診断書、録音、録画データ、警察への相談記録等、

誹謗中傷であれば、相手方から自身あるいは家族等に送付されたメール、LINE等や電話の場合の録音データ等を証拠として提出する事が考えられます。

ただし、誹謗中傷の場合は、通常は、不貞行為や暴力と異なり、1回でもそのようなメールが送付されれば権利濫用という評価になるとは

考え難いため、ある程度の内容の誹謗中傷が、ある程度の回数、頻度でなされている事を証明する必要があると思われますので、相手方が事実を争った場合は、

存在する問題のメール等を全て提出する必要があるかと思われます。また、一部だけ残した場合、前後のやり取りが不明となるため、相手方が、一方的なものではなく、

喧嘩の一環などと主張してくる事も考えられます。このため、一部だけ残すのではなく、全てのメール等を保存の上、事実が争われた場合は、これらを全て証拠で提出すると、

やり取りの全過程が明らかとなり、立証に資すると考えられます。

 

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