離婚調停において提出すべき証拠-72 親権・違法な連れ去り|弁護士ブログ|離婚相談・離婚調停のお悩みは姫路市の城陽法律事務所へ

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2025年06月13日

離婚調停において提出すべき証拠-72 親権・違法な連れ去り

離婚調停、訴訟等で提出すべき証拠を解説いたします。

今回は、離婚を行う夫婦間に未成年の子がおられ、親権に争いがある場合で、相手方が子を連れ去った場合について

考えます。

 

離婚の際に、未成年の子がおられる場合、親権者を定める事無く離婚のみ成立させることはできません。

このため、親権を夫婦のどちらが取得するかにつき、正面から対立が生じた場合、親権をどちらが取得するのがふさわしいかを考えるため、

離婚調停段階において、家庭裁判所の調査官が関与し、裁判官の命令の下、必要に応じて調査官調査がなされ、

夫婦双方及び子の年齢によっては、子と面談を行い、ヒアリングを行い、事実関係及びその評価について、裁判官への報告書として

まとめられ(当事者も閲覧、謄写が可能)、これに基づき話し合いが行われる事があります。当該報告書は、離婚訴訟においても重要な資料となります。

 

もっとも、調査官による調査は、公平中立の立場からなされるものである事や、時間的にも限りがある事、調査官が重要と考える事項について

ヒアリングがなされる事から、親権を争う当事者として、必要な主張や証拠を調査官調査以前に出しておく必要がある事に変わりはありません。

そもそも、何が問題と考えているのか等の主張を出しておかなければ、調査官が問題意識をもって調査することもできないため、裁判所は、通常、

調査官調査以前に、同居中の監護の実態や別居以降の状態、その他自らが親権を取得することがふさわしいと考える理由、相手方が親権を取得することが

ふさわしくないと考える理由等を、当事者双方から書面で提出してもらい(更に必要に応じて認否反論してもらい)、争点整理を行った上で

調査官調査を行うのが通常です。

 

従って、違法な連れ去りが相手方にあり、これが親権を定める上で、消極的な事情の1つとなる旨、主張したいという事であれば、

経過を詳しく主張する必要があります。

 

もっとも、連れ去りがあった場合に、全てが違法な連れ去りに当たるとは実務上、考えられていません。

まず、同居中に子の監護(身の回りの世話。家事、育児、学校等との連絡、送り迎え等)を主に行っていた、主たる監護者が子を連れて

別居を行った場合は、連れ去りの際に暴行を加えた等の事情がない限り、違法な連れ去りには当たらないと考えられます(例えば、東京高決令和元年12月10日は、

「抗告人が別居当時まで未成年者の主たる監護を担っていたことに照らせば、相手方と協議等をすることなく、年少の未成年者(別居当時満4歳)を

伴って家を出たことをもって、違法な連れ去りに当たるとはいえず、他に抗告人の上記行為が違法であると評価すべき事情は認められない。」と判示しています。)。

従って、主たる監護者による連れ去りの場合は、手段が違法であることも主張立証が必要と言えます。

離婚調停、訴訟等で提出する証拠としては、別居開始時の言動の録音データ、メール等が考えられます(1日だけ実家に帰ると話して子を連れ出し、そのまま別居を開始した、

等の虚偽の説明を行った場合や、強行突破して、暴力をふるって無理に連れ出した場合等)。

 

また、主たる監護者が子を連れだした場合に違法とは評価されない根拠は、主たる監護者が子を置いて別居を行うと、

監護を中断しなければならない事になってしまう、という点にあります。

子を連れ出した側が主たる監護者ではなく、子を連れ出された側が主たる監護者である場合は、端的にその旨の主張立証を行うのが有効と言えます。

そもそも、子が乳幼児の場合は、子の連れ去りの点以前に、同居中の主たる監護者が夫婦のどちらであったのか、その内容に大きな問題がなかったのか、と

いう点が最も重要な判断要素となるため、この意味でも重要な主張、立証と言えます。

離婚調停、訴訟において提出する証拠としては、子が出生してから別居に至るまでの具体的な監護状況(誰が何をどの程度の頻度で担ってきたのか、相手方は何を

どの程度の頻度で担ってきたのか)に関する陳述書、母子手帳、学校等との連絡帳、子育ての日記等が考えられます。

なお、裁判所から、子の監護に関する陳述書の提出が求められ、書式が提供される事がありますが、書式に記載されている監護内容(食事の用意等)は一般的に考えられるもの

が記載されているのみであり、実際にはお子様に応じて様々な監護内容が考えられるため、書式に記載されているもの以外でも担われてきたものがあるのであれば、

記載を行うことが考えられます。特に努力したり、心がけておられた事があるのであれば、この点も含めて記載される事が考えられます。

 

当事務所は、親権の対立が生じた事案を多数経験しており、裁判所の調査官の報告書にも多数接しています。

このため、裁判所がどのような点を重視して判断を行う事が多いのか、そのために、どのような主張、立証を行うのが効果的であると考えられるのかを

依頼者の方にアドバイスを行いながら事件を進めるようにしております。

 

離婚を弁護士に相談、依頼をお考えの方は、姫路の城陽法律事務所まで遠慮なくご相談ください。

豊富な解決実績に基づき、お客様と一緒によりよい解決を目指します。


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