離婚調停に提出すべき証拠69-婚姻費用 配偶者以外への暴力等
離婚調停、訴訟等で提出すべき証拠を解説いたします。
今回は、離婚調停と合わせて、離婚までの間の別居中の生活費である婚姻費用分担調停が
係属している場合で、婚姻費用を請求している側が、他方の配偶者以外に対して暴力等を同居中に行っていた場合を
解説いたします。
婚姻費用や、夫婦双方の収入、子の数、年齢によりおおよその負担額が決まることをご存知の方も
多いのではないかと思います。
しかし、ケースによっては、婚姻費用を請求する側が別居に至る原因を専ら作ったと言える場合に、
権利濫用ないし信義則違反を根拠として、婚姻費用の請求が認められない場合があります。
典型例は、婚姻費用を請求する側が不貞行為を行ったとか、他方配偶者に対して、暴力を振るった場合が挙げられます。
自ら別居との関係で有責性のある行動を他方配偶者に行っておきながら、離婚が成立していない事を理由に、生活費を請求するのは
おかしいのではないか、という観点です。
それでは、有責行為のある行為は、他方配偶者に向けられたものに限定されるのでしょうか。
(保護される法的な利益は、他方配偶者の生命身体の安全や、貞操保持の権利に限られるのでしょうか。)
この点については、最高裁の判例ではなく下級審の裁判例となりますが、東京高裁平成31年1月31日決定があります。
別居を行いかつ、婚姻費用を請求した側が、同居中に、子に対し、首を絞める、他方配偶者に対して包丁をつきつけるなどした事が
直接のきっかけとなって別居が開始したと認定されており、更に、経過の根底には、それ以前から子に対し、叩く、蹴るなどの虐待が
存在した旨、認定した上、「本件暴力行為から別居に至る抗告人と相手方の婚姻関係の悪化の経過の根底には、相手方の長男に対する
暴力とこれによる長男の心身への深刻な影響が存在するのであって、このことに鑑みれば、必ずしも相手方が抗告人に対して直接に
婚姻関係を損ねるような行為に及んだものではない面があるが、別居と婚姻関係の深刻な悪化については、相手方の責任によるところが
極めて大きいというべきである。」と判断した上で、婚姻費用の請求を受けた側が、請求を行っている側が住む家のローンを負担し続けていることや
婚姻費用の請求を受けた側が子を養育し、教育費等を負担しているなどの経済的状況に照らせば、「その生活水準を抗告人と同程度に保持することを
求めて婚姻費用の分担を請求することは、信義に反し、又は権利の濫用として許されないというべきである。」と判示しています。
上記裁判例の考え方を前提にした場合、ケースによっては、同居している子に対する暴力などの内容、程度、期間・頻度等や経済的状況によっては、
夫婦の他方当事者に対する有責行為とは言えないものであっても、婚姻費用の請求が権利濫用ないし信義則違反に当たる可能性が考えられます。
証拠としては、相手方の子に対する暴力を示す動画、怪我の写真、診断書、過去に暴力をやめるよう求めたメール等が考えられます。
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