離婚調停に提出すべき証拠-71 婚姻費用未払と有責配偶者
離婚調停、訴訟等で提出すべき証拠について解説いたします。
今回は、離婚を求める側が婚姻費用の未払を続けている場合で、離婚を求められている側は
離婚を望んでおられない場合について考えます。
一方が離婚を望み、他方が離婚を望んでいない場合、法律上の離婚原因の有無が問題となることは
ご存知の方も多いかと思われます。法律上の離婚原因の例としては、不貞行為や暴力等が考えられますが、
このような事情がない場合でも、離婚に向けた別居がある程度の期間継続している場合は、婚姻関係が破綻しているものと
評価され、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるものと考えて、判決で離婚が命じられる事が多いです。
もっとも、このように婚姻関係が破綻していると評価される場合でも、婚姻関係破綻に至った原因が
専らあるいは主として離婚を請求している側にあると評価できる場合には、有責配偶者からの離婚請求として、
権利濫用ないし信義則違反を根拠に、相当長期間の別居が続いており、かつ、未成熟の子がいない場合にのみ
離婚請求を認める考え方を裁判所は採っています。
有責配偶者の典型例は不貞行為、暴力等ですが、様々な事情を総合して判断するため、これに限りません。
近時の裁判例では、離婚訴訟の口頭弁論終結時において別居期間が既に4年6か月を超えるものとなっていた事案について、
婚姻関係の破綻を認定したものの、離婚調停が不成立になった後、それまで行っていた月46万円の送金を停止し、
離婚訴訟の口頭弁論終結時に至るまで、婚姻費用分担金の支払を一切しなかった上、住居を賃貸しているなどとして、
賃料請求の訴訟を提起する等の事情をもって、「原告のこうした振る舞いは、正に兵糧攻めによって被告に原告の
一方的な離婚の要求を受け入れさせようとするものであったということができる。」などとして、「婚姻関係の破綻について
主として責任があるのは、原告と言うべきである。」旨、判示し、原告の離婚請求は、信義誠実の原則に反するとして、
離婚請求を棄却したものがあります(東京家判令和4年4月28日。なお、後日控訴棄却。)。
従って、婚姻費用が未払の事案においては、婚姻費用の支払を受けていた間の振込先の預金通帳、支払がなくなった以降の
預金通帳、婚姻費用の合意を行っている場合は、合意書や婚姻費用分担調停の調停調書等、支払を求めたものの対応しなかった、あるいは
嫌がらせを行ってきた事を示すものとして、メールやLINE等を証拠として提出する事が考えられます。
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