
養育費に関する家族法改正-②法定養育費制度の創設
養育費に関する家族法改正について解説いたします。
今回は、改正により新しく創設される法定養育費についてです。
離婚に際し、養育費についても合わせて取り決めを行う事が多いかと思われますが、
離婚届のみ取り交わして離婚を成立させた場合、後日、養育費の請求を行う場合に問題となります。
養育費については、養育費の調停等を申し立てた以降が養育費調停等で精算される養育費の始期となるのが
原則です。このため、養育費の調停等を申し立てる事で、それ以降の養育費について取り決められる事が期待できます。
もっとも、養育費の調停等を申し立てたとしても、相手方が速やかに養育費の支払を行ってくれるかは別です。
養育費の支払義務者側が考える養育費を仮払いの形で、調停等が成立する以前に任意に支払ってくれる事もありますが、
「養育費の額が決まるまでは一切支払わない」などと述べる方もおられます。
お互いの収入や、特別の費用加算の要否、金額等に争いがある場合、双方の主張、証拠の整理を行うのに期日をある程度重ねる必要が
ある場合も多いです。
また、養育費は、月々の生活費ですので、未払養育費を後でまとめて支払われるよりも、月々支払が得られるのであれば、
その方が生活費に充てることたでき、本来の目的にも沿うと言えます。
そこで、調停、審判等で具体的な養育費の金額が決まっていない段階においても、一定の養育費の支払を受けられるべく、
設けられたのが法定養育費の制度です。
請求を行う事ができる方は、「父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うもの」です。
このため、離婚後、監護を分掌し、それぞれが半分ずつ監護を行っているような場合には、要件を満たさない可能性が
考えられるところです。
法定養育費の始期は、離婚の日、終期は子が成人に達する日または父母の協議により子の監護の費用の分担について
定めた日、あるいは家庭裁判所の審判が確定した日とされています(改正民法766条の3 第1項)。
通常の養育費について、現在の実務では、先に述べた通り、養育費調停等で精算の対象となるのは、養育費の調停等申立時以降の養育費と
されるのが原則ですが、法定養育費については、法定養育費の請求を行った時等が始期となるのではなく、離婚の日とされている点に注意を要します。
金額については、夫婦双方の収入などが不明な段階で決定されるものですので、あまり大きな金額とすると、
養育費の支払義務者に酷である一方で、低額すぎると、制度の意味を失う事になり得ます。
新聞報道された厚生労働省の省令案では、1人当たり月2万円と報道されています。
なお、法定養育費は月額であるため、始まりの日と終わりの日が異なる場合は、日割り計算とされています(改正民法766条の3 2項)。
また、双方の収入に踏み込むことなく法定養育費の金額は決められているため、養育費の支払義務者を保護するための
制度として、支払拒絶が設けられています。
債務者が支払い能力を欠くためにその支払いをすることができないとき又はその支払いをすることによって
その生活が著しく窮迫することを証明したときは、その全部又は一部の支払いを拒むことができる、
とされています(改正民法766条の3 1項但し書き)。
また、家庭裁判所が民法766条2項、3項により、子の監護に要する費用の分担について
定めあるいは変更するときは、法定養育費の規定による債務を負う他の一方の支払い能力を
考慮して、その債務の全部若しくは一部の免除又は猶予そのほかの相当な処分を命ずることができる、
とされています(改正民法766条の3 3項)。
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