離婚調停に提出すべき証拠-72 悪意の遺棄(自宅売却による自宅からの追い出し)による有責配偶者の主張
離婚調停に提出すべき証拠を解説いたします。
今回は、悪意の遺棄を行った側から離婚請求を受けた場合に、離婚に応じられない旨主張する際に、
有責配偶者からの離婚請求であることを主張立証する場合について考えます。
不貞行為や暴力などを行った側から離婚請求があった場合、有責配偶者からの離婚請求となり、
最高裁の判例上、①相当長期間の別居、②未成熟の子がいないことの2つの要件を満たさない限り、
離婚請求は信義誠実の原則に反し、認められないと考えられている事は、ご存知の方も多いかと思われます。
しかし、有責配偶者に当たる場合は、不貞行為や暴力が典型例ですが、これに限られるものではありません。
「これだけの事をした者が、相手方が離婚を望んでいないにもかかわらず、離婚を求めるのは、信義誠実に反する」
と言えるだけの事情があるか否か、という実質的な判断となる事によります(従って、不貞行為や暴力が一方の配偶者にあったとしても、
他方の配偶者にも帰責性が認められる行為がある場合には、場合により、他方の配偶者も信義誠実に反する行為を行っていると
評価され、離婚請求が認められる事も考えられます。)。
不貞行為や暴力以外の例としては、「離婚調停に提出すべき証拠-71 婚姻費用未払と有責配偶者」で解説いたしました通り、
婚姻費用の未払を続け、「兵糧攻め」にした場合に、有責配偶者と評価し、離婚請求は信義誠実の原則に反する、と判断される
可能性があります(東京家裁令和4年4月28日判決)。
この他、婚姻費用の不払いは、離婚原因の1つである「悪意の遺棄」に該当し得るケースの1つとなりますが、
その他、悪意の遺棄を理由として有責配偶者と評価され得る類型としては、一方が他方の住んでいる自宅ないしマンションを第三者に売却してしまい、
これにより生活の本拠を奪われたケースが考えられます(「家庭の法と裁判」51号「東京家裁人事部における離婚訴訟の審理モデル」133頁)。
この場合に離婚調停、訴訟等に提出する証拠としては、問題の不動産の全部事項証明書、転居を余儀なくされた方の住民票等が
考えられます。
そもそも、婚姻関係継続中にもかかわらず、自宅に居住している他方配偶者に対して、「自分が自宅の所有者であるから、出て行け」などと述べたり、
「以降は賃料を払ってもらう。払わないなら出て行け」と述べたり、「自分が所有者だから、自宅は売却する。出て行け。」などと述べる方が
時々おられますが、名義が一方配偶者のみであっても、自宅の購入費ないしローンの支払を夫婦の収入から行っている場合は、実質的に夫婦の
共有財産であり、見かけ上、一方配偶者のみの単独所有に見えても、実質は共有であるため、退去を求めることができない、と考えるのが裁判実務です。
一般的には、別居期間がある程度の期間になった場合、相手方が離婚に応じなくても、離婚請求が認められる、などと解説される事が
ありますが、このように問題のある行動をとった場合、別居期間がある程度の期間存在したとしても、有責性を根拠に離婚が認められない場合が
生じ得ますので、明確な法律上の離婚原因が存在しない、あるいは証拠がないというケースの場合には、適切な婚姻費用の支払を継続し、また、
相手方の生活の本拠を不当に奪わない等の配慮が必要であると考えられます。
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