
家族法改正による離婚調停、離婚訴訟への影響-⑧共同親権制度導入により、父母2人で日々の子の監護をする事になるのか?
令和8年4月1日より共同親権制度が開始したことは、既に新聞報道等でご存知かと
思われます。
一般的な親権のイメージとしては、子の財産の管理権もさる事ながら、通常は、
子の監護権(子の居所を指定し、日々の家事育児等子の身の回りの世話、教育を行う権利)を想起される方が多いかと
思われます。
共同親権制度が導入される事で、
・離婚済みの夫婦で、単独親権を定め、父母の一方が子の監護を行っていた場合に、
共同親権への変更を求めることで、父母2人で日々の監護を行う事を(例えば、平日は一方が、休日は他方が監護するなど)求めることができるか
(監護を現に行っている側の父母からすると、2人での監護を相手方に求められた場合に認められるのか)
・これから離婚を行うが、夫婦で共同親権を合意する場合、あるいは裁判所が、共同親権を定めた場合に、必然的に父母2人で日々の監護を分け合って行う形と
なるのか
が関心事となるかと思われます。
○
この点、父母双方で合意して、2人で共同親権と定めた上で、父母2人で日々の監護を分け合って行う(監護の期間の分掌、あるいは監護の事項の分掌と言います。期間の分掌の例としては、平日と休日で分ける、○歳までは一方が、それ以降は他方が監護を行う等が考えられます。事項の分掌としては、例えば、学校、塾の送り迎えは一方が、残りの監護は他方が行う等が考えられます。)事を定めた場合は、合意として有効であり、そのような監護の分掌を行う事が可能と言えます。
対して、父母で共同親権を定める事に争いはないものの、監護の分掌を行う事については争いがある場合についてはどうでしょうか。
この点、法改正に先立ち、東京家庭裁判所の裁判官複数が競技した研究結果の報告では、
期間の分掌については、
「期間の分掌は、父母が一定の期間ごとに子を交替監護するものであるので、そのような交替監護を行うことが現実的に
可能であることや、父母において子の監護について緊密に協力し合える関係を安定して継続できること、想定している交替監護が子に
過度な負担を与えるものでなことも必要となる。
以上によれば、期間の分掌について検討するに当たっては、監護者指定における各考慮要素のほか、期間の分掌特有の考慮要素として、
①父及び母の住居間の距離や移動時間、②現に交替監護をしている場合にはその状況、③父母の関係性(緊密に協力し合える関係を安定して継続することが
できるか等)、④子の年齢や心身の状況、⑤子の学校・保育・習い事の状況、⑥子の環境の変化への適応性、⑦子と父母の関係性、⑧子の年齢及び発達に応じた
子の意向・心情等についても検討し、子の利益を最も優先してその必要姓(子の利益のために交替監護の定めをする必要があるか)及び相当性(子の利益のために
どのような交替監護の定めをするのが相当か)を判断することになろう。」と解説されています(日本加除出版刊、東京改正家族法研究会編著「詳説令和6年改正家族法」37頁)。
また、離婚訴訟における判断として、
「期間の分掌については、父母が一定の期間ごとに子を交替監護するものであり、父母が子の監護について緊密に協力し合える関係を安定的に継続できることを要するから、
期間の分掌の定めをする必要性が肯定され得るのは、例えば、一定期間、安定的に交替監護を実施した実績がある事案や、同居し子の看護用行くを分担したまま離婚訴訟に
至っている事案など、当事者の実績や必要性に応じた事項を具体的に定めることが想定しやすい事案に限られてくると考えられる。このような事案は、和解になじむことが
多いと考えられることなども踏まえると、判決において期間の分掌を定めるのが相当な事案は現的的と考えられる。
また、事項の分掌については、これまでも父母が一定の事項等につき監護を分掌してきたと認められる事案であれば、そうした実績に応じて事項の分掌の定めを
することは考えられ得るものの、離婚時に子の監護教育をめぐる紛争が具体化・現実化していない場合には、裁判所が事項の分掌を定める必要があるとは認められないし、
一定の紛争が具体化・現実化している場合においても、親権行使社の指定で足りる事案も一定数見込まれることなどからすれば、判決において事項の分掌を定めるのが
相当な事案は限定的と考えられる。」と解説されています(前掲「詳説令和6年改正家族法」187頁)。
以上からすると、共同親権制度が導入された事により、父母が2人で日々の監護を行うという事態は、
現実的にはあまり生じないのではないか、と整理することが出来ると考えられ、
基本的には、これまで通り、父母の一方が日々の子の監護を行う形となる事が多いと考えられます。
(共同親権を定める事とした上で、父母のいずれが日々の子の監護を行うのか、すなわち、子の居所を指定する権限をいずれの父母が持つこととするのかについて
争いがある場合は、子の居所の決定に関する親権行使者指定の調停、審判等を申し立てる事が考えられます。子の居所の指定は重要事項の決定に当たり、
共同親権の場合、夫婦の一方のみでは決定できない事項である事から、この点の協議が整わない場合、協議が整わない重要事項に限って、父母のいずれが
決定権を持つ事とするのかを定めるよう裁判所に求める事となります。)
それでは、これまで通り、父母の一方が日々の子の監護を行う場合に、共同親権を採用する意味がどこにあるのかを考えますと、
日常的な事項の判断は日々の子の監護を行う父母が行うものの、子の重要事項の決定(例えば、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学等についてどこの学校に進学するのかを決定するとか、重要な財産の契約を行う等)については、父母が協議して決定する、という形で、重要事項の決定について日々の監護を行わない側の父母が参画することが
できる、という点にあると整理する事が出来ます。
(なお、重要事項について父母で協議がまとまらない場合は、その事項(例えば、来年、高校進学だがどこの高校に進学するか)を決める親権者を決定する
特定の事項に関する親権行使者指定の調停、審判を申し立て、裁判所に判断する父母を決めてもらう事が考えられます。)
従って、単独親権を定めて離婚された父母の一方が、共同親権への変更を求める場合、共同親権の採用をもって当然に父母2人で日々の子の監護を行う事が
認められる事にはならないため、重要事項の決定への参画を行う事に意義を見いだすことが出来るか否か、という観点から共同親権への変更を
求める調停、審判を行うか否かを判断する事になるかと考えられます。