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2023年08月24日

離婚調停に提出すべき証拠-64 有責配偶者からの離婚請求で、未成熟子が存在する場合

離婚調停に提出すべき証拠を解説いたします。

今回は、不貞行為、暴力等を行った、いわゆる「有責配偶者」が離婚請求を行う場合で、

夫婦間に「未成熟子」が存在する場合について考えます。

 

離婚の請求を行う場合に、離婚を求める側に不貞行為や暴力など、婚姻関係の破綻に至った主たる原因の

責任がある有責配偶者の場合、訴訟で離婚が認められる基準が、有責性がない場合と異なり、厳しくなることは

ご存知の方も多いかと思われます。

 

すなわち、通常の場合であれば、特に相手方に不貞行為や暴力などが存在しない場合でも、

離婚に向けた別居が3~5年程度継続している場合、訴訟で離婚が認められやすくなると言われています(但し、別居中の対応によっては、

別居期間が経過していたとしても、離婚を認めないケースも裁判例上、存在するため、注意が必要です。)。

 

対して、離婚を求める側に不貞行為や暴力が存在する場合、「有責配偶者からの離婚請求」となり、

最高裁の判例上、①相当長期間の別居、②未成熟子が存在しないこと、③離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な

状態におかれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反すると評価されるような特段の事情がないこと、が要件と

されていると言われています(最高裁昭和62年9月2日判決)。

 

ここで、「未成熟子」とは、経済的に独立して然るべき年齢に達しておらず、かつ、現に独立していない子の事を指します。

通常は、大学を卒業する22歳程度までとされる事が多いように思われます(その前に社会人となり、生計を立てている場合は別)。

このような未成熟子が存在する場合、訴訟で有責配偶者からの離婚請求が認められる余地はないのでしょうか。

 

この点、別の最高裁判例である平成6年2月8日判決は、「未成熟の子がいる場合であっても、ただその一事をもって

右請求を排斥すべきではなく」、「(未成熟子の監護・教育・福祉の状況等の)事情を総合的に考慮して右請求が

信義誠実の原則に反するとはいえないときには、右請求を認容することができると解するのが相当である。」と判示しています。

従って、原則としては、未成熟子がいない事が、有責配偶者からの離婚請求が認められる要件と言えますが、例外として、

上記のような評価ができる場合は、有責配偶者からの離婚請求であっても、判決で離婚が認められる余地があることとなります。

 

当該最高裁の事案では、高校2年生の子がいるものの、間もなく卒業する年齢であり、かつ、離婚を請求する側が

月15万円を送金し、子の養育にも無関心であったものではない旨評価し、更に、相手方に対して、離婚に伴う経済的給付

(700万円を支払うというもの)も、その実現が期待できることなどから、離婚請求を認容しています。

 

そこで、未成熟の子がいる場合でも、高校生の場合に、これまで十分な生活費、学費を負担してきたことや、

財産分与等で相当の金額の支払が可能であることを、過去の生活費の支払がわかる預金通帳や、財産分与を構成する財産として

どのようなものがいくらあるのかを示すため、預金通帳や株式、投資信託等の資料、不動産の価値のわかる資料等を提出し、

財産分与としていくら支払うべき事案であり、これを即時に支払うことができるだけの財産構成になっていること(現金性の髙い預金や

換金が容易な株式、投資信託等で、財産分与の支払が容易であること)を示すことが考えられます。

 

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